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建築基準法の遡及適用

建築基準法というのはほかの法律とは違う独特のシステムをもっている。

法律が変わってその法律にあわない部分が出てきても、そのまま住んでいるだけなら新しい法律に合わせなくてもいいですよという免責がされているのだ。 これを建築基準法の既存不遡及という。

たとえば消防法令の改正で一般の住宅にも火災報知器をつけることになると、新築はもちろんすでに建っている住宅でも火災報知器を取り付けなければならないのだが、建築基準法の場合は法律が変わってもすでに建っているものは新しい法律を適用しないのだ。

大規模な改修工事をするとか建て替えるとか増改築をするということで今すでにある建築物に何か手を加えようという場合には、残りの部分も含めて新しい法律に合わせてくださいねという話になっている。

だからたとえば用途地域が変更になってそこでは溶剤を使うクリーニング店が営業できないことになったとしても、用途地域が変わる以前にすでにそこで商売をしていた場合にはそのまま営業していていいですよ、という話になる。ただし建物を建て替えると営業できなくなる場合がありますよということ。

これは建築基準法の一番基本的な考え方の問題なのだけれど、法律が変わった場合にすでに建っている建築物もその法律を適用するなんてことになると、年がら年中一番新しい基準に合わせて工事をしなければいけないことになって、それでは社会というものががたがたになってしまうのですな。

だから今現在建っている建築物の半分以上は、最新の法令に関しては不適合という現状になっている。こんな不思議な法律はほかにない。、

 

 

 

既存不適格の問題で行政が困っているものは大きく言ってふたつあって、一つはアスベストの問題、もうひとつは耐震改修の問題、これを何とかしなければならないというのが緊急の課題になっている。

今建っている分にはアスベストの建材が使われていてもそのままでいいということになると、危険な建材が使われている建築物がほったらかしになってしまう。

戦前から建っている古い木造住宅で、耐震上よくない構造になっていておまけに古くなってがたがたになっているようなものでも、既存不適格の壁に阻まれていつまでたっても改善されないなんていう事例は、空襲で焼けなかった下町にはたくさんあります。戦後の鉄筋コンクリートの建物でも、まだよく地震のことがわからなかった時代の技術基準で作られたものの中には、震度5弱でぶっつぶれる可能性があるなんていうのもざらにある。

学校建築で新しく壁を作ったり大きなブレスを入れたりしている例というのもたくさん出てきたけれど、あれは緊急にやらなければいけない課題ではあるのだが法律違反ではないのでなかなか予算が付かないみたいだ。

住宅の耐震改修を進めたくて自治体はいろいろ工夫しているんだけれど、たいていの場合には耐震補強をすると家の使い勝手は悪くなって不便になって金ばかりかかっていいことがないというので、補助金が出ますよと言ってもなかなかみんなやりたがらないみたいです。

 

この住宅はアスベストが使われているから直ちに解体して建て直しなさいなんていうことをしたら、住宅の改築で破産する家庭が続出するわけです。

 

 

 

 

まとめて言うと、建築基準法は既存不遡及の考え方なんだけれど、そのままでは危険な建築物がほったらかしになっていつまでたってもよくならないので、既存の建築物でも改修が進むように法律を整備して予算が付くようにする、これが今の建築行政の大きな課題になっているということです。

 

建築基準法令集 法令編〈平成22年版〉

建築基準法令集 法令編〈平成22年版〉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 技報堂出版
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本

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